
歩留まりとコスト|なぜ最先端チップは高いのか
2026-08-12 ・ 入門
同じチップでも、作る難しさで値段は大きく変わります。カギは**歩留まり(ゆうどまり)**です。
歩留まり=良品の割合
1枚のウェハには何百個ものチップができますが、全部が良品とは限りません。良品の割合が歩留まりです。歩留まりが低いと、同じ枚数から取れる売り物が減り、1個あたりのコストが跳ね上がります。
なぜ欠陥が出る?
回路は原子数個ぶんの細さ。ホコリ1粒、露光のわずかなズレ、材料のムラ——どれも欠陥になります。数百工程のどこか1つでミスれば、そのチップはアウトです。
最先端ほど歩留まりが低い
新しいノードは製造が難しく、立ち上げ当初は歩留まりが低めです。2026年時点の2nm世代では、各社でこんな差がついています(各社・報道ベースの目安)。
約65%
TSMC N2
約55%
Intel 18A
約40%
Samsung SF2
この差が、価格競争力と受注の差に直結します。TSMCが強いのは、この歩留まりと量産の安定感が大きな理由です。
だからチップは高い
最先端の工場(ファブ)は建設に2〜3兆円規模。EUV装置は1台100億円超。巨額の投資を、歩留まりを上げて大量に売ることで回収します。ここが半導体ビジネスの厳しさであり、参入障壁でもあります。
もう少し詳しく(背景)
半導体の採算を決めるのが歩留まり——1枚のウェハから作ったチップのうち、正常に動く割合です。製造は数百工程もあり、どこかで微細な欠陥が入ると、そのチップは不良になります1。ここに残酷な数学があり、チップの面積が大きいほど、欠陥に当たる確率が上がって歩留まりが急激に悪化するのです。だから大きなチップ(高性能GPUなど)は、1個あたりのコストが跳ね上がります2。この歩留まりの経済学が、半導体のあらゆる判断に効いてきます。たとえば大きなチップを小さなチップレットに分割する動機も、小さいほど歩留まりが良く、良品だけを選んで組み合わせられるから。新しい製造技術も、性能だけでなく「安定して高い歩留まりを出せるか」で採用が決まります。量産の立ち上げ時は歩留まりが低く、経験を積んで改善していくため、歩留まりを早く上げられる企業ほど強い——これが製造の競争力の核心です。指先のチップの値段の裏には、この見えない歩留まりの戦いがあります。