
半導体エンジニアになるには?仕事の種類・必要な学び・広がるチャンスを解説
2026-08-13 ・ 入門
「半導体エンジニア」と聞くと、なんだか難しそうな理系専門職というイメージがあるかもしれません。でも実際には、回路を設計する人、工場でチップを作る人、装置を動かす人、材料を研究する人、できあがった製品を検査する人、設計を支えるソフトウェアを作る人など、実にさまざまな仕事が組み合わさって半導体産業を支えています。しかも今、世界的に半導体人材が足りておらず、日本ではラピダスやTSMC熊本工場の稼働によって新しい採用の波が起きています。この記事では「半導体エンジニアになるには何を勉強し、どんな道があるのか」を、これから進路を考える人向けにやさしく整理します。
この記事で分かること
- 半導体業界には設計・製造・装置・材料・品質・ソフトウェアなど多様な職種がある
- 世界では2030年に半導体人材が150万人規模で不足すると予測されている
- ラピダスやTSMC熊本工場の稼働で日本国内の採用・再教育の動きが加速している
対象読者:半導体業界への就職・転職を考えている学生や社会人
執筆:ゆるふわ半導体編集部 最終更新日:2026年8月13日
半導体業界にはどんな仕事があるの?
半導体を作るには、たった一人の天才エンジニアではなく、専門の違う多くの人の連携が必要です。大きく分けると「チップの中身を考える設計系」「実際にモノを作る製造・装置・材料系」「できたものを確かめる品質系」「それらを支えるソフトウェア系」に分類できます。
回路設計エンジニア(かいろせっけい)
チップの中にどんな回路を組み込むかを考える仕事です。CPUやスマホ用チップなどの「頭脳」部分を設計します。詳しくはチップ設計の流れも参考にしてください。
プロセス・製造エンジニア(せいぞう)
シリコンウエハーの上に回路を作り込む「前工程」を管理する仕事です。ナノメートル単位の精度で薄膜形成やエッチングなどの工程を最適化します。fabの製造プロセスで全体像がつかめます。
装置エンジニア(そうち)
半導体製造装置を導入・調整・保守する仕事です。露光装置やエッチング装置など、超精密な機械を扱う専門性が求められます。半導体製造装置とはもあわせてどうぞ。
材料エンジニア(ざいりょう)
シリコンウエハーやフォトレジスト、特殊ガスなど、半導体づくりに欠かせない素材を研究・開発する仕事です。日本には世界シェアの高い材料メーカーが多く、実は強みの分野です。
テスト・品質エンジニア(ひんしつ)
完成したチップが仕様どおりに動くか、不良がないかを検査・保証する仕事です。歩留まり(良品率)の改善にも関わります。
EDAソフトウェアエンジニア(いーでぃーえー)
チップの設計・検証を助けるソフトウェア(EDAツール)を開発する仕事です。ハードよりソフト寄りの人材でも半導体業界で活躍できます。
設計系の仕事
- 回路図やレイアウトを考える
- シミュレーションやEDAツールを多用
- 電気電子工学・情報工学の知識が中心
- オフィスでのデスクワークが多い
製造・装置系の仕事
- ウエハーの上に実際に回路を作り込む
- クリーンルームでの現場作業がある
- 材料工学・物理・化学の知識も重要
- 装置トラブルへの即応力が求められる
どんな学び・学歴が必要?
半導体業界は間口が意外と広く、学部段階で決まった一本道があるわけではありません。とはいえ、多くのエンジニアは理工系の学位を持っています。
| 分野 | 代表的な進路 | 向いている職種の例 |
|---|---|---|
| 電気電子工学 | 大学・大学院で回路理論、半導体物性を学ぶ | 回路設計、EDAソフトウェア |
| 材料科学・化学 | 材料工学科、応用化学科など | 材料エンジニア、プロセス開発 |
| 物理学 | 物性物理、応用物理を専攻 | プロセス開発、研究職 |
| 情報工学・コンピュータ工学 | 情報系学部でアーキテクチャやプログラミングを学ぶ | EDAソフトウェア、CPU設計(CPUの仕組みも参照) |
| 機械工学 | 生産・制御系の学び | 装置エンジニア、生産技術 |
学部卒でも道はある
研究職や先端の回路設計には大学院(修士・博士)まで進む人が多い一方、製造現場のプロセスエンジニアや装置エンジニアは学部卒からのスタートも珍しくありません。企業によっては文系出身者でも、社内研修や実務を通じて品質管理や生産管理の分野で活躍する例もあります。
半導体エンジニアになるまでの道のり(一例)
理工系の基礎を学ぶ
高校〜大学で物理・化学・電気電子・情報などの基礎を固める
専門分野を選ぶ
大学・大学院で回路設計、材料、プロセス、ソフトウェアなど専門を深める
インターン・研究室で実務に触れる
企業インターンや研究室配属で実際の装置・ツールを経験する
半導体メーカー・装置メーカーに就職
設計、製造、装置、材料、品質などの部門に配属される
専門を深める・キャリアチェンジ
資格取得や社内研修、再教育プログラムでスキルを更新し続ける
世界的に広がる半導体人材の不足
AIや自動運転、次世代通信などの需要拡大を背景に、半導体産業は世界中で人材確保が追いつかない状況にあります。業界団体SEMIの幹部は、2030年までに世界で半導体人材が150万人規模で不足する可能性を指摘しています。米国でも同様に、技術者不足が今後の生産能力拡大の足かせになるという分析が出ています。
約150万人
2030年に世界で不足すると予測される半導体人材(SEMI幹部の指摘)
約1,700人
TSMC熊本第2工場が見込む新規雇用者数
約4,000人
ラピダス千歳工場の建設ピーク時に集まった作業員数
約11.2兆円
TSMC熊本進出による地域への経済波及効果(試算)
不足しているのは「現場」だけではない
人材不足は工場のオペレーターだけでなく、回路設計者、プロセスエンジニア、装置保守の専門家、さらにはEDAソフトウェアの開発者まで、業界のあらゆる階層に及んでいます。そのため各国が奨学金や大学との連携プログラムを急ピッチで整備しています。
日本の半導体産業「復活」と広がる採用
日本は1980〜90年代に世界の半導体生産をリードしていましたが、その後シェアを落としてきました。しかし近年、政府主導の巨額投資によって流れが変わりつつあります。象徴的なのが、次世代半導体の国産化を目指す新会社ラピダスの北海道・千歳工場と、台湾TSMCが熊本県に建設した工場です。詳しくは日本の半導体産業の記事もあわせてどうぞ。
ラピダスは2ナノメートル世代という最先端の半導体量産を目指しており、千歳では建設ラッシュとともに関連企業の集積や住宅・インフラ整備が急速に進んでいます。TSMC熊本工場はすでに稼働しており、第2工場の建設も始まっていて、直接雇用に加え周辺の部品・材料・建設業界にも広く波及効果が及んでいます。こうした動きを受けて、大学の半導体関連学科の新設や社会人向けの再教育(リスキリング)プログラムも各地で立ち上がっており、異業種からの転職者にも門戸が開かれつつあります。
未経験からでもチャンスがある分野
装置の保守や品質管理、生産管理などの職種では、半導体そのものの知識よりも機械・電気の基礎知識や現場での対応力が重視されることも多く、企業の研修制度を活用してキャリアチェンジする人も増えています。
まとめ
- 半導体業界の仕事は回路設計、プロセス・製造、装置、材料、テスト・品質、EDAソフトウェアなど多岐にわたる
- 電気電子工学・材料科学・物理学・情報工学など理工系の学びが土台になるが、進路は一本道ではない
- 世界では2030年に向けて数百万人規模の人材不足が懸念されており、業界を挙げた人材育成が急務になっている
- 日本ではラピダスやTSMC熊本工場をきっかけに新規雇用と再教育プログラムが急速に拡大している
もう少し詳しく(背景)
半導体人材の不足は、単に「人が少ない」という話ではなく、需要の伸びが速すぎて教育・育成が追いつかないという構造的な問題です1。特に微細化が進むほど、プロセスエンジニアには物理・化学の深い理解が求められ、即戦力の育成には時間がかかります。一方で日本の場合、ラピダスの2ナノ量産計画やTSMC熊本の稼働によって、地域単位で急激に雇用需要が生まれており、大学だけでなく高専や職業訓練校、社会人向けリスキリング講座までを巻き込んだ人材供給網の構築が課題になっています23。
関連記事: チップ設計の流れ、ファブレスとファウンドリの違い、半導体製造プロセス、半導体マップもあわせて読むと、業界全体の構造がより理解しやすくなります。
参考資料・出典
- SEMI幹部「2030年、世界の半導体人材150万人不足」日本経済新聞、世界的な半導体人材不足の見通しに関する報道
- 米半導体業界が「人材ブラックホール」に直面、2030年に技術者15.7万人不足の恐れ米国の半導体技術者不足に関する分析記事
- TSMC熊本第2工場「建設始まった」1700人雇用見込むTSMC熊本第2工場の雇用計画に関する報道
- TSMC熊本進出が企業投資と地域産業に与える影響〜11.2兆円規模の経済波及効果〜地方経済総合研究所によるTSMC熊本進出の経済波及効果試算
- ラピダスで変わる千歳市 作業員4000人集結、高台に「街」日本経済新聞、ラピダス千歳工場の建設・雇用に関する報道
- 半導体エンジニアになるには?仕事内容・スキル・将来性を紹介半導体エンジニアの職種・必要スキルに関する解説記事
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執筆:ゆるふわ半導体編集部 最終更新日:2026年8月13日