半導体は一社ですべてを作れません。世界中の得意企業が分担する壮大な分業体制です。全体像をつかみましょう。
5つの役割と主要プレイヤー
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設計:ファブレス
工場を持たず設計に専念するのがファブレス。NVIDIA(AI用GPU)、Apple(スマホSoC)、Qualcomm、そして設計の土台を提供するArmなどが代表格です。
製造:ファウンドリ
設計を受託製造するのがファウンドリ。台湾のTSMCが最先端で圧倒的、Samsung、巻き返しを図るIntel Foundry、日本のRapidusが続きます。
装置・材料:日本とオランダの牙城
- 露光装置:オランダのASML(EUVは独占)
- 各種製造装置:東京エレクトロン(日本)、アプライドマテリアルズ(米)
- 材料:シリコンウェハの信越化学・SUMCO、フォトレジストなど、日本勢が世界シェア上位
後工程:OSAT
組立・検査を担うOSAT(ASE・Amkor)。近年は先端パッケージの重要性が増しています。
だから地政学の焦点に
どの1カ所が止まっても世界中の生産に影響します。この「つながり」が、輸出規制や経済安全保障の主戦場になっている理由です。
半導体はなぜ「戦略物資」なのか
半導体はAI・スマホ・自動車・防衛装備まで、あらゆる基盤です。最先端チップを持つ側が経済でも軍事でも優位に立てる——だから各国が供給網を握ろうと動いています。
米国の対中規制と同盟国連携
米国は安全保障を理由に、先端半導体と製造装置の対中輸出を制限してきました。2026年には、規制を日本・オランダなど同盟国にも広げる動きが強まり、東京エレクトロンなど装置メーカーへの影響が焦点になっています。
ねらい
先端の製造装置(EUVなど)を止めれば、相手の最先端製造を遅らせられる。装置・材料が「効くツボ」になっています。
中国の対抗措置
規制される側の中国も、ガリウムなどのレアメタルの輸出管理や、日本企業のリスト指定などで対抗しています。半導体に不可欠な素材を「軍民両用」として管理する動きが広がっています。
台湾集中というリスク
最先端ロジックの多くが**台湾(TSMC)**に集中しています。もし台湾有事や災害で供給が止まれば、世界の産業が麻痺しかねません。この一極集中リスクこそ、各国が製造を自国に呼び戻す(日本のRapidus・TSMC熊本など)最大の動機です。
まとめ
半導体の地政学は「作る力」「止める力」「素材を握る力」の三つ巴。ニュースはこの3つの視点で読むと分かりやすくなります。
日本の半導体:かつての栄光と、その後
1980年代、日本はDRAMなどで世界シェアの過半を握る半導体大国でした。しかしその後、価格競争や投資判断の遅れなどで最先端ロジックの製造から後退。装置・材料では今も世界トップ級という「強い部分と弱い部分」が同居する状態が続いています。
日本の復活戦略:RapidusとTSMC熊本
TSMC熊本
JASMが量産・第2工場も
Rapidus
北海道千歳で2nm試作成功
国の支援
巨額補助で製造を国内回帰
- TSMC熊本(JASM):ソニー・デンソーも出資し量産を開始。関連投資が地域経済を押し上げています。
- Rapidus:北海道・千歳で2nm量産を目指す新会社。2nmの試作に成功しましたが、量産規模とビジネスモデルの確立がこれからの課題です。
日本政府が本気な理由
半導体は経済安全保障の要。AI・防衛・自動車すべての基盤であり、供給を他国だけに頼るのはリスクです。だから国は巨額補助で製造能力の国内回帰を進めています。日本の「戦略17分野」でも半導体は筆頭格です。
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半導体は、一国で作れる製品ではありません。設計は米国、製造は台湾・韓国、装置はオランダ・米国・日本、材料は日本、組立は東南アジア——というように、世界中に工程が分散し、複雑に絡み合った供給網(サプライチェーン)で成り立っています1。
この国際分業が効率を最大化してきた一方で、特定の工程が特定の国・企業に極端に集中しているという脆さも生みました。最も象徴的なのが最先端製造の台湾(TSMC)への集中と、EUV露光装置のASML(オランダ)独占です2。
この「地図」を理解すると、なぜ半導体が地政学の焦点になるかが見えてきます。どこか一箇所が止まれば——災害、事故、紛争、輸出規制——世界中の生産が連鎖的に止まる。だから各国は、自国に製造能力を呼び戻そうと巨額の補助金を投じ、供給網の「脱・一極集中」を図っています。半導体の世界地図は今、効率優先から「安全に作れること」重視へと、大きく描き替えられている最中です。
つぎに読むなら
- 半導体の地政学・輸出規制
- 日本の半導体・Rapidus・TSMC熊本
- チップ設計の流れ
