
DRAMとNAND型フラッシュメモリ — メモリ半導体の基本
2026-08-13 ・ 入門
パソコンやスマホを使うとき、私たちは「メモリ」という言葉を何気なく使います。でも、パソコンの中には性質のまったく違う2種類のメモリ半導体が入っていることは、意外と知られていません。ひとつはアプリを動かすための「作業机」にあたるDRAM、もうひとつは写真や動画をしまっておく「本棚」にあたるNAND型フラッシュメモリです。この2つは、CPUのような「考える」半導体(ロジック半導体)とは根本的に違う設計思想でつくられていて、それぞれ専門のメーカーが世界規模で競争を繰り広げています。この記事では、そんなメモリ半導体の基本をゆるっと整理していきます。
この記事で分かること
- DRAMは電源を切ると消える「作業用」メモリ、NANDは電源を切っても残る「保存用」メモリ
- CPUなどのロジック半導体とは設計・製造の考え方が異なり、専業メーカーが存在する
- DRAMはSamsung・SK hynix・Micron、NANDはSamsung・Kioxia・SK hynix・Western Digital・Micronなどが主要プレイヤー
対象読者:半導体やITの基礎を学び始めた学生・初心者の方
執筆:ゆるふわ半導体編集部 最終更新日:2026年8月13日
メモリ半導体とは何か
半導体チップは大きく分けると「ロジック半導体」と「メモリ半導体」の2種類に分類されます。CPUやGPUのようなロジック半導体は計算や判断を行う頭脳の役割を担い、回路の設計が非常に複雑で多品種少量生産に近い性格を持ちます。一方でメモリ半導体は「データを記憶する」ことに特化しており、同じ構造のセル(記憶素子)を何十億個も規則正しく並べる、いわば大量生産型の製品です。
この違いから、メモリ半導体は独立した産業として発展してきました。ロジック半導体の世界ではTSMCのようなファウンドリ(受託製造専業)とファブレス企業(設計専業)が分業する構造が一般的ですが、メモリの世界ではSamsung電子、SK hynix、Micron Technology、Kioxiaといった企業が設計から製造まで一貫して手掛ける「IDM(垂直統合型メーカー)」として君臨しています。同じ規格の製品を莫大な設備投資で大量生産し、価格競争と技術世代の更新スピードで勝負するのがメモリ産業の特徴です。
ロジックとメモリ、何が違う?
ロジック半導体は「多様な回路をどう組むか」が勝負どころですが、メモリ半導体は「同じ構造のセルをどれだけ小さく、どれだけ多く、どれだけ安く積めるか」が勝負どころです。そのため微細化や積層といった製造技術そのものが競争力に直結します。
DRAM:電源が切れると忘れる「作業机」
DRAM(ディーラム(Dynamic Random Access Memory))
CPUが計算する際に一時的にデータを置いておく主記憶装置。読み書きが非常に高速な一方、電源を切るとデータが消える「揮発性メモリ」です。パソコンの「メモリ容量◯GB」という表記は、多くの場合このDRAMの容量を指しています。
DRAMのセルは、1つのトランジスタと1つのコンデンサ(キャパシタ)の組み合わせでできています。コンデンサに電荷が「たまっている」か「たまっていない」かで、1ビットのデータ(1か0か)を表現する仕組みです。ただしコンデンサの電荷は自然に少しずつ漏れてしまうため、データを保持し続けるには数十ミリ秒おきに電荷を読み直して補充する「リフレッシュ」という動作が絶えず必要になります。これが「Dynamic(動的)」という名前の由来です。
このリフレッシュ動作や、電源を切れば内容が消えてしまう性質のために、DRAMは長期保存には向きませんが、その分アクセス速度が非常に速く、CPUが必要とするデータを即座にやり取りできます。だからこそ、パソコンやスマホ、サーバーの「主記憶」として使われているのです。
NAND型フラッシュメモリ:電源を切っても覚えている「本棚」
NAND型フラッシュメモリ(ナンドがたフラッシュメモリ)
電源を切ってもデータが消えない「不揮発性メモリ」。SSD(Solid State Drive)やUSBメモリ、スマホの内蔵ストレージなど、データを長期間保存する用途に使われます。
NAND型フラッシュのセルは、トランジスタの中に「浮遊ゲート」または「電荷トラップ層」と呼ばれる、電気的に絶縁された特別な層を持っています。ここに電子を注入したり引き抜いたりすることで、電源を切っても電子がその場に留まり続け、データが保持される仕組みです。コンデンサの電荷が自然に漏れていくDRAMとは対照的に、絶縁層にしっかり閉じ込められた電子は長期間安定して残ります。
近年のNANDはさらに、セルを平面ではなく垂直方向に何十層、何百層と積み重ねる「3D NAND」という構造が主流になっており、同じ面積でもより多くのデータを記録できるよう進化を続けています1。またNAND型フラッシュは、書き込み前に一定のブロック単位でまとめてデータを消去する必要があるという独特のクセを持っており、そのクセを制御するための頭脳としてSSDの中には専用のコントローラーチップも搭載されています。
DRAM
- 揮発性(電源オフでデータ消失)
- 1トランジスタ+1コンデンサでセルを構成
- 読み書きが非常に高速(ナノ秒単位)
- 主記憶(メインメモリ)として使用
- 書き換え回数の制限は事実上ほぼ問題にならない
NAND型フラッシュ
- 不揮発性(電源オフでもデータ保持)
- 絶縁層に電子を閉じ込めてセルを構成
- DRAMより低速だがHDDよりは高速
- 補助記憶(ストレージ・SSD)として使用
- 書き換え回数に上限があり寿命管理が必要
世界のメモリ半導体産業
DRAMとNANDはそれぞれ、限られた数の巨大メーカーによる寡占市場になっています。DRAMは特に集中度が高く、2026年第2四半期時点でSamsung電子が約39%のシェアで首位を維持し、SK hynixとMicronが僅差でそれを追う構図が続いています2。NANDはDRAMよりもプレイヤーの数がやや多く、Samsung電子を筆頭に、Kioxia(キオクシア、旧東芝メモリ)、SK hynix、Western Digital(旧SanDiskの技術を継承)、Micronなどが上位に並びます3。
約39%
DRAM市場シェア首位 Samsung電子(2026年Q2)
上位3〜4社
DRAMは事実上ほぼ3社(Samsung/SK hynix/Micron)の寡占
上位5社前後
NANDはSamsung/Kioxia/SK hynix/WD/Micronがひしめく
日本とメモリ産業のつながり
かつて日本企業もDRAMで世界を席巻した時代がありましたが、現在の日本発の主要プレイヤーはKioxia(キオクシア)です。Kioxiaは東芝メモリを源流とし、NAND型フラッシュメモリの発明元でもある企業として、Western Digitalと技術・生産で協業しながら世界市場で戦っています。
寡占市場ゆえに、メモリ半導体には「シリコンサイクル」と呼ばれる需給の波が生まれやすいという特徴もあります。各社が設備投資を積み増して供給が増えすぎると価格が急落し、逆に需要が供給を上回ると価格が急騰する、というサイクルを繰り返してきました。近年は生成AI向けサーバーの急増によってDRAMやNANDの需要そのものも底上げされており、メモリ産業の重要性はかつてないほど高まっています。
まとめ
- DRAMは電源を切るとデータが消える「揮発性メモリ」で、CPUの作業机にあたる主記憶として使われる
- NAND型フラッシュメモリは電源を切ってもデータが残る「不揮発性メモリ」で、SSDなどのストレージに使われる
- DRAMは1トランジスタ+1コンデンサ、NANDは絶縁層に電子を閉じ込める構造で、それぞれ異なる原理でデータを記憶する
- メモリ半導体はロジック半導体と異なり、同一規格の製品を大量生産するIDM型の産業構造を持つ
- DRAMはSamsung電子・SK hynix・Micronの実質3社寡占、NANDはそこにKioxiaやWestern Digitalが加わった構図になっている
もう少し詳しく(背景)
メモリ半導体が独立した産業として扱われる背景には、製造プロセスの違いだけでなく、需要の性質の違いもあります。ロジック半導体は「新しいスマホ」「新しいAIチップ」など製品ごとに異なる設計が必要ですが、メモリはどのメーカーの製品であっても規格化された仕様(DDR5、PCIe対応SSDなど)に沿っていれば互換性があり、価格と容量・性能で比較されるコモディティ(汎用品)に近い性質を持ちます。そのため、各社は「いかに同じ機能をより小さいセルで、より安く、より速く作るか」という微細化・積層化の技術競争にひたすら資本を投下し続けてきました。
また、DRAMとNANDはAI向けの派生技術としてそれぞれ進化を遂げています。DRAMを積層して超高速・広帯域にしたものがHBM(High Bandwidth Memory)で、生成AI向けGPUに欠かせない部品になっています。この記事では扱いきれなかったHBMの詳しい仕組みについては、関連記事もあわせてご覧ください4。
DRAMやNANDの動作原理、メモリ産業の構造についてさらに理解を深めたい方は、トランジスタの基礎やCPUの仕組み、AI向け高帯域メモリを解説したAIチップとHBM、そしてメモリ産業特有の需給サイクルを扱ったシリコンサイクルもあわせてご覧ください。
参考資料・出典
- Samsung Electronics Maintains Top Spot in Q2 DRAM Market with 39% Share (Counterpoint Research経由)2026年Q2のDRAM市場シェアに関する報道
- AI Demand Reshapes DRAM Rankings in Q2 2026Counterpoint ResearchによるDRAM市場分析
- Second-Tier No More: Kioxia and SanDisk Balance Alliance and Rivalry in AI NAND RaceTrendForceによるNAND市場・企業動向の分析
- Global NAND Memory Market Share: QuarterlyNAND型フラッシュメモリの四半期別市場シェア推移
- Global DRAM and HBM Market Share: QuarterlyDRAMおよびHBMの四半期別市場シェア推移
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執筆:ゆるふわ半導体編集部 最終更新日:2026年8月13日